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「おいしいレストランの見つけ方」の巻


 糸杉の並木の道に冬の木漏れ日がやわらかく落ちて、風はさやさやと葉を揺らす。ヴィッラから出て長く真っ直ぐ延びる道を小走りに近づいてきたステファーニアは、栗色の髪をきりりと束ね、こぼれるような笑みを振りまいて歓迎を全身で表現している。言葉がなくても通じる心地よさに惹かれて、何度もイタリアへ来てしまうのかもしれないとふと思う。

 一月といえばカンティーナなんてたいてい閉まっているものなのだが、行ってやるから見学させろ試飲もさせろのワガママをステファーニアは聞きいれてくれた。地下にあるオークや桜の大樽で、ワインが熟成を待ちながら静かに横たわってウフフの時を過ごす、ヒンヤリうっとりのカンティーナ=ワイン蔵見学。ヴァルポリチェッラとソアーヴェのワインについてのレクチャー、おまけにテイステイングまでアレンジしてくれたステファーニアはエライ。若くて美人なのに優しいというのがほんとにエライ。イタリアには時々こういう良くできた女性がいる。

 セレーゴ・アリギエリで、テイスティングに準備されていたのは、白ワイン二種と、赤ワイン二種である。

●SOAVE CLASSICO SUPERIORE DOC 1997=ソアーヴェ・クラッシコ・スーペリオーレ97年
「いやー、イイですね」
ぐび。
「ふーむ、なかなかですなー」
ぐびぐび。

●SEREGO ALIGHIERI BIANCO 1997=セレーゴ・アリギエリ・ビアンコ97年。
「む・・なんというか・・む」
ぐびぐびぐび。
「でも飲んじゃいけないんでしょ」
ふんふん。
「そう、口に含んで、こっちのフラスコみたい
のにパッと」
パッパ。パッパ。

●VALPOLICELLA CLASSICO SUPERIORE 1996=ヴァルポリチェッラ・クラッシコスーペリオーレ96年。
「オオ、わかりますか、このちがい」
んぐぐ。
「んーと、こっちのと、これとですか」
ぐぐぐ。

●BARDOLINO CLASSICO SUPERIORE 1997=バルドリーノ・クラッシコ・スーペリオーレ97年。
「ワカらないです、わたしはどちらもイイ」
「そうですよねやっぱり、ワカんないすよネ。
でも、いいなあ、やっぱ」
ごくごく。
「ま、ぐーっといって、ぐーっと」
がぶごぶぶ。




 パッと見て、サッと飲んで、ワーッと買いまくって、一時間もいれば充分だろうと考えていたのが大間違い。醸造過程の見学ってのもなかなか面白いもので、時間の経つのを忘れてしまった程である。なかでもアマローネは日本で夏に見る葦簀張りのヨシズのようなものを畳大の棚の上に敷いて、その上に収穫したブドウを並べて乾燥させ糖度を高める。アパッシナートというこの過程で100〜120日間かけてブドウの水分30%を蒸発させ、糖分とグリセリンの濃度が高まると貴腐菌が付いて、一層複雑な味わいのワインができるというのである。

 アルプスやドロミテの山並みが屏風の役割を果たし、ヴェネト州の中でもヴェローナ周辺、特にヴァルポリチェッラはワイン造りに適した気候風土、地形環境をかね備えている。育種学、農学、気象学、地質学、環境学など学際的な研究の結集からワインというものが造られているようなのだった。

 イタリアにはブドウ畑なんていくらでもあるから、ワインなんて簡単に造れるだろうと甘く見ていたが、講義を拝聴したあとは
「すまぬ、すまぬ」
「アリガタやモッタイなや」
「もーマージ社のヴァルポリチェッラ以外は買わんけんねワシら」
「ワタシにもください」
「オラにも」
「ホント、おいしいわ」
「こちらも頂こうかしら」
「こんな、ふくよかなワインて初めてやわ」

 すっかり川島直美となった隊員達が蔵ごと買い占める勢いで迫るので、こちらもつられてヴァルポリチェッラアマローネの88年、90年(スンバらしいあたり年)、93年(あたり年)の三本を衝動アセり買いしてしまったのであった。



 ワイン蔵探索に時の過つのも忘れた一行がヴェローナへ到着したのは、午後三時到着の予定をかなり遅れて七時を回ろうかという頃だった。こちらもヴェローナは初めてなので晩飯をどうするかはまったくノーアイデアである。こんなときはどーすればいいのか。

 イタリアにはそんなとき役立ついい本がある。risitoranti d'Italia=イタリアのレストランというGambero Rosso Editoreのガイドブックだ。手元にあるのは1997年版で、三年前買ったとき38,000リラだった。毎年七月に新しい版が出るので今頃は2000年版が出ているのだろうが、別にこれで充分用が足りる。この本を見つける前はもっぱら、ミシュランの赤本頼りだったが、いまはツオーイ味方が二人もできたので向かうところ敵なしである。ところが、今回は強い味方のガイドブックをおいてきてしまった。

 ヴァルポリチェッラでは昼間もウマイもの食って、ワイン蔵でもしこたま飲んだ。ヴェローナに着いた晩は時間も遅かったので、フロントに聞いてホテルの近くのトラットリアへ行った。

 知らない土地で知り合いや頼れる本がなくても、最強の奥の手が残っている。街へ出て食事の時間になったら、そこらにいる地元の人に聞いて、おいしいレストランを見つけてしまう方法だ。ただし、誰でも彼でも聞けばいいというものではなく、人を選ばなければならない。若い人はそれなりに安くておいしいカジュアルな店を教えてくれるだろうし、それなりの年格好の人はそれなりのレストランを教えてくれる筈だからである。自分の希望と予算にあったアドバイスを得るためには、日頃から風体身なりだけで人を見抜くスルドイ観察眼を磨いておく必要があるということだ。

「えー、そこのひと、ちょっと教えて下さい。ここらでおいしいレストラン知らんすか?」
 ヴェローナでも早速、歩いているおじさん三人組をつかまえて聞いてみた。突然話しかけるヘンなイタリア語、東洋的扁平的面相にイタリア人だって一瞬は怪しむが、遠慮無用。ひたすら話しかけてしまいませう。なにしろウマイもの食いたいんだから必死。
「イタリアに行ったらご用心」
「話しかけられたらご用心」
なんて言ってた人もいたけど、この際、忘れなさい。こっちが必要なときは、どんどん聞いてしまうほーが勝ちですワ。やっぱり。

 普段から人を見る目を養ってきたおかげか、ヴェロネーゼのおじさん三人組は、ナント、自分たちの道を変更し迂回して、お勧めレストランRistorante Greppiaの近くまでわざわざわれわれを連れて行って下さいました。エ、エライ。ホントにイタリアのおじさん達は親切である。

 中心街Via G Mazziniから一本入った「グレッピア」の入り口の額縁入りメニューでバジェットを確かめる。店の雰囲気とカメリエーレの態度も合格である。やりました。初めて来た町で見つけたとはとても思えない内容が、イタリアグルメ探索隊の☆☆☆なのでありました。

 しかし、イタリアはどこへ行っても安くておいしいレストランがあるのはさすがである。高くておいしいのは当たり前だが、高くないのにおいしいところが立派である。イタリアへ行ったら人に聞き聞きでも、こんなレストランを見つけ出すのが楽しみのひとつなのである。





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