カプリ島は、回りを切り立った崖に囲まれている。行く前はあくまで白砂青松砂浜が続きビーチパラソルやデッキチェアが並ぶと想像していたが、実際は海からいきなり屹立する断崖の島だ。ソレントやナポリから船が着くマリーナグランデが、唯一の大きな入り江となっている。
水中翼船でナポリから45分、ソレントからなら20分で行くことができる。一行は午前中ナポリからポムペイ遺跡を探索したので、ソレントから船に乗ることにしたのだった。
マリーナグランデから山を登ったところにカプリの街がある。海からは登山電車も出ている。われわれは港から出迎えのクルマで坂道を登り、ホテルまで来てしまったが、大概の旅行者は、この登山電車を利用しているようだった。乗車券は片道1.3ユーロなので、150〜60円だろうか。
カプリへ来たら一度は見ておきたい青の洞窟=グロッタアッズーラへ行ってみることにした。早起き朝食を済ませ、フニコラーレ(登山電車)でマリーナグランデへ。グロッタアッズーラ行きの船に乗るのだが、早すぎて、始発の9時まで待たされてしまった。
乗船してから後ろを見ると、小さなボートがいくつもロープで繋がれ、男が一人づつ乗っている。着いた先でこのボートが必要になるらしいが、一体何をするのだろう。と思っていたら、このボート男たちは、青の洞窟に着くやいなや、先着して?待ち受けていたボート男仲間と合流して、我先に船の客を奪い合いだすのだった。
朝一番乗りのわれわれの乗った船が着くや、待ち受けボート男たちが、こちらめがけてワラワラとタカってくる。イタリア人には珍しい慌てぶりに、思わず笑ってしまう。ボート男たちは観光客を小舟に乗せ、青の洞窟の中へ案内していくのを生業にしているのであった。上客を乗せて稼ぐチャンスの奪い合いで生存競争だから、そりゃあ必死にもなりますワね。
小舟に分乗して、いよいよ、グロッタアッズーラへ入る順番がやってきたが、これはなかなかスリリングな体験だった。潮が満ちてきている時間帯なのか、洞窟の入り口は海面からわずか30cm程、舳先がモロにぶつかる高さしかない。波というか、潮が引いて水位が下がったときに敢然と中へ突入するのであった。
誰にも言っているにちがいないが、ボート男は、オレの操船術は一番で安全だとか、洞窟の中へ入ったらサービスして一周多く回るとか、最後にチップをくれるなんてことがあると大歓迎だなあ、てなことをねだり続ける。
洞窟の中は思ったより狭く、次々に突入してくるボートで直ぐに一杯なってしまう。何しろ、メシの種となれば、少しでも回転を早くして次の客を乗せたい。中へ入ったら、今度は一刻も早く外へ出なければならない。その気持が挙動から伝わってくる。
洞窟の中は真っ暗で光りは入り口から射してくるだけ。ボート男の歌うナポリ民謡が洞窟の壁に反響して雰囲気も上々。水は確かに青々と透明で、射し込む光りに不思議な蛍光青光りの波となり、人々を包み込んでしまうのであった。
青の洞窟探索にかかった軍資金は、船に乗るとき払った9ユーロと別に入場料を11ユーロ徴収され、三人分のチップとして5ユーロ渡したので、しめて25ユーロであった。
ボート男には世話になったし、こういうチップはしかたないか。一応歌も聞かせてくれたしナ、一度は見ておいてよかった青の洞窟。であったしナ、といつまでたってもチップ慣れしないジャポネーゼは一人頷くのだった。
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カプリ船着き場
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タクシーは日産の改造オープンカー
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ラ・レジデンツァ・ホテル
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