イタリアスキー探索隊の合い言葉は「夜中は降って」と問われたとき「昼間は晴れろ」と答えるのだが、今回は雪不足だったので寝る前にも、
「夜中は降って昼間は晴れろ」
と各自が三度唱えることにしていた。その効あって、十日の午後から降り始めた雪は、夜の間もどんどん降り続き、朝になっても降りやまず、冬枯れドロミテを一変させる豪華絢爛堂々一挙70cmの大雪となった。
「あー、見渡せばドロミテは一面の銀世界」
に、よーやくなって頂けました。よかった、
「おじさんは嬉しいよ。杉作ぅ」
なんであるが、今度は降りすぎで、ゴンドラリフトの殆どが運休となってしまった。しかたないので、滑りに行く人、休養する人、各自自由行動にするしかない。
いわき市の能戸俊輔=プロフェッソーレノトは青森に生まれ東北に育っただけあって、新雪深雪が大好きである。
「どーすると、こんなとこが滑れるの?」
「・・・まわりにこういう雪しかなかったもんで・・・圧雪されたとこよりも・・・こっちの方が・・・滑りやすい。」
しゃべりには・・・が随所に散りばめられて、訥々としているが、滑りの方はスピードに乗って流麗である。
雪国で生まれたSJ愛読者。今シーズンはカービングの板を新調した。研究肌で今回も最初の二日間はストックなしで練習していた。となれば、滑りは切れない筈がない。欠点と言えば、人が入ってない斜面を見つけると、たちまちそわそわと挙動が怪しくなること。
「おいおい、こんなとこいくのかよ、うそだろ!」
と言うような所で、勝手に隊を離れて滑って行ってしまうことかもしれない。
ということで、プロフェッソーレノトとソムリエハラダは降りしきる雪の中をニカニカ嬉しげに滑りに行っってしまった。こちらは雪が降ったら滑らない居残り組とブラックジャックをして日がな一日過ごしていた。バクチなんかしたことない能戸洋子は見る間に負けが込んで
「俊輔さんが帰ってきたら、なんて言おう」
という身売り寸前状態になってしまったのである。
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