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「セッラロンダの途中で迷子」の巻

ドロミテ、セッラ・ロンダの途中でパッソガルデナ=ガルデナ峠

ドロミテ、アラッバからセッラ・ロンダ。セッラ山群が正面にみえてきた。

 イタリア、ドロミーティの中にセッラと呼ばれる山群がある。Gruppo di Sella=グルッポ・ディ・セッラ、訳せばセッラ山群。最高峰は、Pitz Boe=ピッツ・ボエ3152mだが、頂上にはドロマイトの峰々が連なっている。Sellaはイタリア語では馬の鞍であるが、どちらかというと、形はクリスマスケーキ状で、四方周囲全面赤茶ドロマイトむき出し絶壁、頂上部連峰所々冠雪馬の鞍山群なのである。

 セッラのまわりには大小の渓谷が無数にあるが、主な渓谷は四つである。Val Gardena=ヴァルガルデナ、Val Badia=ヴァルバデーィア、val di Fassa=ヴァルディファッサ、Valle delle Cordevole=ヴァッレデッレコルデーヴォレである。そして、セッラとこれらの渓谷の至る所に、宝石をばらまいたように、村々が点在し、そこには、広大、機能的、ダイナミックなスキー場が存在する。

 Sella Ronda=セッラロンダとは、rondaが巡回、パトロールの意味なので、文字通り、この鞍の形をしたセッラ山群の回りのアラッバ、カナツェイ、ガルデナ、コルヴァーラ、サンカッシアーノ、ラヴィッラなどの村々をぐるっと巡回することなのだ。ゴンドラリフトを乗り継ぎながら滑る、スキーサーカス、セッラロンダは、時計回りと反時計回りの両方向に回ることが可能だ。

 セッラロンダはセッラの裾野のいずれのスキー場からもスタートして、またその村へ帰ってくることができる。Sella Rondaの標識はオレンジ色とグリーンの二種あって、時計回りはオレンジのサインボードを、反時計回りはグリーンの標識を追っていけばいい。色んな所に、サインボードがあって、迷うかもしれないが、どちらへ行っても、回る方向さえ間違わなければ結局は、どちらの方向にも辿り着けるようになっているので安心していい。

 セッラロンダを一度でも体験すれば、取りあえず、ドロミテスーパースキーの拠点
ALTA BADIA=アルタ・バディーア
VAL GARDENA=ヴァルガルデナ
●VAL DI FASSA E CAREZZA=ヴァルディファッサ。
ARABBA=アラッバ
ALTA PUSTERIA=アルタ・プステリア
●VAL DI FIEMME=ヴァル・ディ・フィエンメ。
等の、周縁をなぞって回ることができる。ドロミテスーパースキーのシステムはここでも必要且つ十分にスキーヤーをサポートしてくれ、得難い体験を可能にしてくれるのである。




 茅野市の楓山一登は、コルティナマドンナ、アオスタスーパースキー、セストリエーレを一緒に滑ったスキーの大先輩である。今年六十九歳だが、国内はもちろん、イタリアへも毎年二、三回は行ってしまう人である。成田空港で会うと必ず、若い人を捕まえて、
「あなた達はいいねえ。若いからねえ。これからいくらでもイタリアに行けるものねぇ。私なんかはもう年だから」
「いや、いや、未だまだ、お若いですよ」
「いや、そういうことじゃなくて、私なんかは、あなた方に較べると、先がないからね」
初対面だったりすると、ここらでどう受けていいか戸惑ってしまうのだが、聞いてると、
「毎年三回ぐらい行っても、イタリア全てを滑るというわけにはいかないからね。あなた達は若いんだから、毎年一回行ってれば、いつかイタリアを滑りきることができますよ」
「はあ、ま、そうですよね、そういうことになりますよね」
「だから、欠かさず、イタリアへ毎年必ず行きなさいね。私なんかはイタリアに気付くのが遅かったから、毎年三回ぐらいじゃ、なかなか追いつけませんからねえ」
ということなのである。

 楓山一登はかくして、過去四次にわたる探索に洩れなく加わってきた。綿密にして緻密な性格と先見性、何処へ行っても欠かさない情報収集と隊員達の滑りのチェック。そして夕食時の各自の滑りへの適切な寸評と助言。イタリアスキー探索隊の技術指導兼参謀総長として人望を集め、回を重ねるごとに、探索隊になくてはならぬ人となったのである。

 楓山は探索隊以外のイタリアスキーツアーにも参加しているので、各スキー場に精通し、こちらが酔っぱらってる間も、常に資料整理に余念がない。彼の記録に目を通せば、スキー場の位置、日照、雪質、コース難易度、そして探索隊の足跡が全て明らかとなる。そのうち、インターネット上で、全記録を公開していきたいと考えているので、是非このイタリアスキーの一級資料に触れてほしい。

 こう書くと、楓山が全くスキのない冷徹の人のように聞こえるかもしれないが、それだけでは、探索隊の人気を取ることはできません。次のような人間らしいヒューマンエラーの連続シュートを放つことで、その人気は、鰻登りとなり不動のものになったのであった。
「ボルミオ撤収日。スキー板置き去り事件」
「セッラロンダの途中で迷子事件」
「マドンナ。出発の朝寝坊事件」
「アオスタ。大雪出発便乗り遅れ事件」
今回、全てを紹介できないのが残念だが、毎回なかなかの連続得点ぶりである。




 探索隊が初めてセッラロンダに挑戦したのは、コルティナへ行ったときのことである。早朝コルティナを出発して、アラッバからスタート、ポルドイ峠を滑って越えると、サッソルンゴで名高いヴァルガルデナである。ドロミテ街道の最高点ポルドイ峠を滑りながら、次々に眼前に広がってゆく景観は筆舌に尽くしがたく、映像に捉えがたい。まさにこの世で味わえる最高の贅沢と言える。先月号で、
「刻一刻、変わる景色の中を、自らも夢幻となって移動する、恍惚感動異次元クルージングスキー」
と言ったのは、決しておおげさではない。

 ガルデナでの昼食後、再び滑り出しコルヴァーラへ向かった。途中一ヶ所だけ板を外して道路を渡る場所があったが、真っ直ぐ滑り降りていくコースなので、大して気にもせずそのまま暫く行ってから、一旦人数確認のために停まった。数えてみると、あらら、誰かが一人足りない、何度数えてもやっぱり足りない。誰だ、誰がいないのだと、一瞬体中の汗腺が開いて汗が吹き出る気がした。

 ガイドのアンドレアが待ちきれず、探しに戻ると何度も言うのを、押しとどめた。楓山なら必ず、自力で帰還すると思ったからである。それに、もしアンドレアも行ったはいいが、戻ってこなければ、こちらが立ち往生して、どうやってコルティナへ帰ったらいいのか実のところ分からなかったからでもある。

 不安な時間が過ぎ、祈るように全員が来た方角に目を凝らす中、楓山は、何事もなかったかのように、およそ三十分後に隊に復帰した。道を渡ってから、右へ降りる谷を下ってしまったそうである。怪我とか遭難とかじゃなくて、ほんとに良かった。暖かい皆の拍手に迎えられて、楓山はちょっぴり照れくさそうだった。


北イタリア、バッサーノ・デル・グラッパ

北イタリア、ドロミテ、セッラ・ロンダの途中で、名峰サッソルンゴ(3,181m)

ドロミテ、セッラ・ロンダの途中パッソガルデナ=ガルデナ峠で、道を渡って、楓山一登が迷子になった


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