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「イタリアへ行ったらご用心」の巻

 イタリアのボルミオに住む村上由利子という人から、先日一通のE-メールが届いた。もちろんこちらは知らない人だが、スキージャーナルのこのページを読んで、アドレスを知ってメールをくれたのだ。日本に一時帰国するので、会って話したいという。

 帰国した村上由利子は十一月十一日、アリタリアの事務所へ訪ねてきた。彼女はもう四年も、夏はステルヴィオのスキースクールでヴィデオウーマンとして働きながらスキーをして、冬はステルヴィオのスキー場が豪雪のため閉鎖となるので、ボルミオの街へ下りてホテルBaita dei Pini=バイタ・デイ・ピーニを手伝いながらスキーをしているそうである。つまり、い、一年中ほとんど滑っているわけだ。な、なんてウラヤマましー。

 どーしたら、そんなうらやましい身分になれるのかは誰だって知りたい。知りたいひとには知る権利がある。そこで、初対面から興味津々根掘り葉掘り聞いてみた。

 村上は偶然にも実家が横須賀で、我が家のある茅ヶ崎の文教大学出身と、結構隣近所の人であった。大学時代にスキーを始めたそうで、卒業後オリックスに就職したが、スキーへの思いが捨てきれず、二年で退職。夏は立山の山小屋でバイトし、冬はスキーをするという生活を数シーズン送った。飯綱高原の見谷SSのロッジに居候してた五年程前、イタリア夏スキーのメッカ、ステルヴィオへ行ってみたら、これがすっかり気に入ってしまったらしい。

 なんとかここで暮らしたいものだわねと、独力でイタリア語を覚え、ステルヴィオのスキースクールでヴィデオ撮影の仕事も得て、イタリアで暮らし始めて既に四年目。セストリエーレのワールドカップで日本チームや取材記者の通訳や長野オリンピックの通訳などもしたらしい。
「今シーズンはベルガモに部屋を借りて、ベルガモ大学のイタリア語講座で、もうちょっと本格的にイタリア語を勉強してみたい」
静かに村上は言うのであった。

 時代は変わる。茅ヶ崎駅のあたりですれ違っていたかもしれない若い女性が、ステルヴィオなんて知る人しか知らない、イタリアの山また山の奥深くへ行って、気に入ったからそこに住んでしまうという、したたかな時代になったのである。

 これがチェルヴィニアコルティナダムペッゾなら、大して驚きもしないが、ステルヴィオである。冬の間は、豪雪のため道路も通れなくなって閉鎖されるような山奥だよ。イタリアーノだってほとんど知らない、夏しか開かないスキー場なのだ。

 おまけに、電脳社会、ヴァーチャルリアリティの申し子だから、自分のホームページだって持っていて、そこで生活身辺記録を公開している。覗いて見ればステルヴィオ、ボルミオがどんなスキー場か分かるし、デボラ・コムパニョーニが恋人のベネトンの御曹司とスーパーで買い物してた、なんてこともスクープしている。村上と話しながら、静かなパワーをお裾分けして貰い、久振りに爽やかな時間が素早く流れていくのであった。


 今年の夏、イタリアで暮らす村上を訪ねて、日本から彼女の友達が三人でやって来た。ドゥオモの近くのセルフサービスで食事することがあり、四人掛けのテーブルに陣取った。奥に座った二人にテーブルに残って貰い、
「じゃ、行って取ってくるから、バッグ見ててね」
村上ともう一人の友達が、食べ物飲み物を取りに行くことにした。トレー持つのに邪魔だし、二人も残ってんだから、この場合誰だってバッグは置いていきますワね。

 ところが、料理を取り終わって席に戻ると、椅子の上に置いといたバッグがない。さあ、たいへんの大騒ぎで食事どころじゃない。残ってた二人に聞いても、狐につままれたように、全く分からない内に盗られてしまったらしい。

 思い当たるのは、残ってた二人に誰かがしきりに手を振ってたことぐらい。
「わたしたちかしら、なんだろうね」
二人がそちらを見ているスキに、反対側から椅子の上にあったバッグを置き引きされたと考えるしかない。残った二人から向かいの席のバッグが死角になっているのを、盗った奴らは巧みに利用したのだった。

 警察へ届けに行ったら、日本のパスポートが入ったバッグが地下鉄の駅のポリツィアに届けがあったと言われて、地下鉄に乗って見に行ったが、友達のものではなかった。中には当日出発の航空券やらパスポートやらが入っていたが、それはまた他のジャッポネーゼが盗難にあったのだった。可哀相に。

 これまでずーっとイタリアのいい話ばかりしてきたが、それは、こちらの気が許せる間柄の話ばかりだからである。イタリア人がすべて善人ではもちろんない。どこ行ったって悪い奴はワンサといるのだ。だから、折角のイタリアスキーを楽しい思い出にするためには、自分が、しっかりと用心するほかないのである。ったく。油断もスキもあったもんじゃないなあ。なんとかしろよ、イタリア。


 こうしている間もジャッポネーゼは、世界中安全人類皆兄弟無用心無防備無警戒だって皆で行けば恐くないと海外に出かけ、待ち受けるカモ鴨ライ来必殺狙い撃ち軍団のエジキになっているのだろう。

 うおーっ。こりゃ、こうしちゃいられんワ。こんなことしてる場合じゃない。今すぐミラノへ飛んでいき、東に買い物に夢中になるギャルいれば、行って
「お嬢さーん、ごようじん!御用心!このあたりは、置き引き、かっぱらいがウヨウヨいまーす。皆さんの財布が狙われてますよー」とオラび。
西に群れなして記念写真に夢中になるオババがいれば、
「あー、ほらほら。そこのおかーさん。上ばっかり見てちゃ、ダメダメ。写真撮るときも、バッグをそんなとこに置いて離れちゃダーミだったら。あっという間に持ってがれちゃうんだから。おがさん」と叫ぶ。
そういう人になっちゃおーかなぁ。なればなったで恥ずかしい。けど、けど。

 ミラノのドゥオモ広場やモンテナポレオーネ通りの辻つじに立って、大音声でご注意も申し上げたいが。やり始めちゃうと、
「浜の真砂が尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」
で、一生やらんといけなくなるから、そうもいきません。かわりに、こうしたご注意のテープを各所で流すつーのはどうだろうか。

 イタリアがそんなこと許可するわきゃないよね。ま、しかたないので、とりあえずは紙面を借りて、微力ながら緊急のご注意を申し上げちゃったのである。それにしても、なんだか、懐かしいなぁ。日本では「かっぱらい」なんて死語と化してしまったよね。
なははは。

 じゃが、イタリアではまーだまだ生きているのだ。おのおの方、油断召さるな。ミラノへ行かれたら、
くれぐれもご用心なされよ。




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