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「クールマイユール。ヴァレー・ブランシュ氷河大滑降」の巻、その3
クールマイユール、ラパルーからのモンテ・ビアンコ=モンブラン
Monte Bianco,La Palud(1370m) Courmayeur Valle d'Aosta : March 2003

クールマイユール、フニヴィア・モンテ・ビアンコ
Funivia Monte Bianco ,Courmayeur Valle d'Aosta : March 2003

クールマイユール、モンブラン・ケーブル
Funivia Monte Bianco ,Courmayeur Valle d'Aosta : March 2003

 悪天候ですっかりあきらめていたのに、起きたら雲ひとつない快晴。昨日は二本くらい滑っただけで立ち往生。日がな一日レストランの窓越し、吹き荒れる雪眺めていたのが嘘のよう。山の天気は分からない。

 ステファノの電話で、「ヴァレーブランシュに行ける」と聞いて、全員直ちに身支度に取りかかる。ローマ広場まで行って、ラパルーへのバスに乗るのだ。SS26号線に面したローマ広場はミラノ、トリノだけでなく、シャモニーやジュネーヴ、全てのバスが発着するターミナルになっている。

 ラパルー(1,370m)から氷河滑降のスタート地点となるプンタ・エルブロンナー(3,470m)までは、モンテビアンコケーブルで誰でも簡単に登ることができる。

 頂上の眺望台からは手の届きそうな位置に、モンテビアンコ(4807m)デンテ・デル・ジガンテ(4104m)のパノラマが大迫力で迫ってくる。チェルヴィーノ(4478m)、モンテローザ(4634m)など4000m級の名峰やエギュイ・デ・ミディを一望できるのだ。

 スキーを続けてきてよかった、と思うのはこうしたときである。元来がグータラなのでスキーをしていなければ、こんな遠いところへ来るはずもないし、想像できない世界を見るなんてこともなかったに違いない。

 生きてる内に一度はプンタ・エルブロンナーまで登っておきなさい。ヴァレー・ブランシュに挑戦しない人も、そうしなさい。遭遇するはずのない未知の世界は、待っているだけでは開かない。


クールマイユール、ラパルー、フニヴィア・モンテ・ビアンコ
Funivia Monte Bianco ,Courmayeur Valle d'Aosta : March 2003

クールマイユール、ラパルーからのデンテ・ジガンテ
Funivia Monte Bianco ,Courmayeur Valle d'Aosta : March 2003

 モンテ・ビアンコ・ケーブル乗り場でもう一人のガイド、ジャンフランコが待っていた。彼の足下には大きなズダ袋が置いてあり、中には18人分の救命ザイルが収納されていた。ヴァレーブランシュ氷河滑降には、山岳ガイドが必要なのである。

 自己責任で滑っている地元のスキーヤーもいるが、他国者にはクレバスがどこに潜んでいるかなんぞ分からない。毎年ここで何人かが命を落としているのだ。侮りは禁物。街の中心にある、ガイド協会で手配して貰うのが賢明というものだろう。

 協会の決まりでは、スキーヤー八人に対して、ガイドが一人付くことになっている。探索隊一行は丁度十六人。ステファノとジャンフランコの二人で探索隊一行をサポートしてくれるのが心強い。もし、人数が足りなければ、二人のガイド代をシェアするか、他に希望者がいれば一緒に滑ることになるわけだ。

 プンタ・エルブロンナー(3,470m)までのフニヴィアは三段構えで架けられている。基点のラパルー(1,370m)からは、実に2,100mの標高差があることになる。それをたった二回乗り換えるだけで登らせてしまうんだから、やってくれるますよねぇ、イタリア。

 ドロミテのマルモラーダも、マルガチャペラ(1446m)からゴンドラで、殆ど山頂に近い3269m地点まで行くことができた。標高差が1823m。それより更に300mも標高差があるって、さすがだよなぁ、イタリア。

 垂直に近いような角度で登りながら、アルプスの山並みがどこまでも見渡せ、陽光に反射して眩しい。一段目のフニヴィアでパヴィヨン(2130m)へ到着すると、アルプスの渓谷沿いに、くねって広がるクールマイユールの街(1224m)がきらめいていた。


パヴィヨン(2,140m)に到着。クールマイユール、フニヴィア・モンテ・ビアンコ
Pavillon(2,140m), Funivia Monte Bianco ,Courmayeur : March 2003

パヴィヨン(2,140m)から見るクールマイユールの街(1224m)
Courmayeur veduta da Pavillon ,Funivia Monte Bianco : March 2003

パヴィヨンから2段目のフニヴィアで上へ

 プンタ・エルブロンナーへ到着するや、
「ワー!すごい」
「デンテ・ジガンテ〜」

 隊員たちはデジカメ片手に記念写真を撮り始める。遠くを指して叫んでいる隊員もいる。
「あそこに、ちょこんと頂上が出ているのは」
「チェルヴィーノやわあ」

 確かに特徴ある山容を覗かせているのはマッターホルンだ。まさか、ここから拝めるとは思っていなかったが、離れて見るチェルヴィーノは小さくて可愛らしい。今度は180度反対側で、一斉に声があがっている。
「ハーッ!これは?オオ!」
「エ?え!、あれが、モンブラン!?」

 プンタ・エルブロンナーからのモンテビアンコはモンブランケーキと違い、鋭く切り立った崖がそそり立つ男性的な山容。間近で見れば圧倒的な迫力であった。しばし、うっとりと眺めていると、モンテ・ビアンコの大斜面、遙か下の方を、何かがゆっくり動いていく。
「見てみて、誰かあんな所を」
「ウワー!ホントだ!滑ってる!」

 昨日の吹雪で降雪した、ひと一人入らないモンブラン直下の大雪原を、スキーヤーたちが滑っている。トウラ氷河の白いキャンバスをシャープな線で切り裂いていく、そのかすかな動線が、今この瞬間生きる者の証である。

 トウラ氷河を滑るこの機会を、彼らはずっと前から狙っていたに違いない。先頭のスキーヤーの行く手には、まだ誰のシュプールも刻まれてはいない。昨日の吹雪、今日の好天を待ち受けていた、あっぱれな雪追い人たち。


プンタ・エルブロンナー(3,470m)からのデンテ・デル・ジガンテ(4,014m)
Dente del Gigante(4,014m), vista da Punta Helbreonner(3,470m) : March 2003

プンタ・エルブロンネルからのモンテ・ビアンコ(4,810m)
Monte Bianco(4,810m) Courmayeurvista da Punta Helbreonner

モンテ・ビアンコ直下の新雪を滑るスキーヤーが

 「さあ、そろそろ、我々も滑る準備をしないと」ジャンフランコとステファノに呼ばれて、興奮しっぱなしだった隊員たちが、ひとり一人救出用具を付けて貰い始める。

 万が一クレバスに落ちたら、ここにザイルを引っかけて上に引き上げて貰うのだ。物々しい装備に身を固められた隊員たちの表情に少しだけ緊張が走った。でも、お互いのガンジガラメ緊縛状態は、つい笑ってしまうのだった。

 いよいよ、準備は整った。悠久の大氷河へ分け入って行こう。プンタ・エルブロンナーからエギュイ・デ・ミディへの空中ケーブルが、たわみながらも真っ直ぐに延びている。ヴァレー・ブランシュの大雪原が静かに瞬いている。

 吹雪がもたらした新雪は、人も踏み入らぬまま、視界の尽きるところまで、厖大な広がりで続いていた。天は我に味方した。前日の悪天候がかってない舞台をしつらえ、絶好の機会をもたらしてくれたのである。

 満を持した探索隊一行は先導のジャンフランコとステファノが待つ雪面に降り立ち、神々の宿る場所へ一歩踏み出すのであった。



Punta Helbreonner(3,470m) Courmayeur : March 2003



クールマイユール、トウラ氷河のオフピスタを滑るスキーヤー
Sciatori su Fuori Pista della Toula ,Courmayeur : March 2003


クールマイユール、トウラ氷河のオフピスタを滑るスキーヤー
Sciatori su Fuori Pista della Toula ,Courmayeur : March 2003


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