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「クールマイユール。ヴァレー・ブランシュ氷河大滑降」の巻、その2
モンテビアンコ=モンブラン直下の街クールマイユール。  窓を開けるとアルプスが
Courmayeur Valle d'Aosta : March 2003

クールマイユール、モンテ・ビアンコ、デンテ・ジガンテ、グランジョラス
Courmayeur Valle d'Aosta : March 2003

 窓を開けると静まり返った街の屋根が見えた。安山岩の一種だろうか、黒い鉄平石のようなアオスタ特有の瓦屋根が低く続いている。家並みが薄闇と溶け合う地平には、アルプスの嶺々が輝く天の一角をなしていた。

 ヨーロッパアルプスが屏風のように取り囲むクールマイユールの朝。アルプスの雪が朝日を浴びてバラ色の光りを放っていた。ヨーロッパ最高峰モンブラン直下の街クールマイユールへやって来たのだ。

 マルペンサ空港で昨晩、迎えに来ていたバスに乗ると、一番前の席にイタリア人のおばさんが座っていた。年格好からはドライバーの奥さんのようで、聞いてみると、二人ともベルガマスコ(ベルガモっ子)で夫婦だという。クールマイユールは行ったことがないし、帰り道旦那一人で寂しかろうと一緒に来たらしい。

 日本だったらお客さんの乗るバスに、運転手のカミさんが同乗するなんてありえないが、ここはイタリア。五十人乗りのバスに、乗るのは二十人足らず。降りてくれと仲を裂くわけにもいかんし、ま、旅は道連れといきましょう。

 ベルガモはミラノの北50km圏内の街で、ミラノは通勤圏である。99年に交通事故で亡くなったトラサルディもベルガモの住人で、ミラノから帰る途中、アウトストラーダで事故を起こしたのであった。

 イタリア人は自分の生まれた土地から出ずに暮らす人間が多い。ベルガマスコのドライバーもイタリアから外国へ出たことがないという。休暇もサルデーニァやシチリアで過ごす。職業柄国内はあちこち走るが、飛行機には乗ったこともないらしい。

 マルペンサから三時間足らずで着くはずだったクールマイユール。眠っている間にベルガマスコの運転手はアオスタからの高速に乗り損ねてしまったようで、気が付いたら地の道を走っている。まあ、寝てるだけだから、少々遅れても一緒だけどね。

 今回宿泊するのは目抜き通りをちょっと入ったロイヤルゴルフで、大型バスは入ることができない。通りの入り口は、下の広場から来る道と交差する場所なので駐車禁止である。

 どうするんだろと思っていると、ホテルからワゴン車が現れて、あっという間に荷物を運んでしまうのであった。全員にルームキーを渡し、スキーをスキールームへ納め、鞄を部屋に運び入れたのは、夜半近くであった。

 窓を開けてみたが真っ暗でなにも見えない。明日からクールマイユール、ラトゥイールを滑り、ヴァレーブランシュ氷河を滑るのが、今回の目的である。長旅の汗を流して、即ベッドへ潜り込んでしまう。

 眠れるときに眠っておくのがなにより、飛行機の中で窮屈な思いしてくると、ベッドで身体を伸ばせるだけで、もう何も欲しくない。世界で一番幸せな男はオレに違いないと思った瞬間、深い眠りに落ちてしまうのであった。


 目白の銀嶺スポーツで新調したラングのブーツに足を入れていると、人の気配がした。振り返るとクールマイユール山岳ガイド協会のウェアを着た青年が立っていた。ガイドのステファノだった。これから彼と一週間を共にする。立ち上がって握手して皆に紹介した。

 二つのエリアに分かれているクールマイユールのスキー場のうち、初日は街と直結しているシェクルイへ行くことにする。調子が出なければゴンドラで直ぐ戻ってくればよい。もうひとつのヴァル・ヴェニのスキー場だと距離を滑らねば戻ってはこられない。

 ステファノを先頭にホテルパヴィヨン近くのゴンドラ乗り場まで歩いていく。今日はゆっくりいくことにしよう。海外スキーの怪我の発生率は初日が最も高いというから。

 探索隊も発足から八年。初回から楓山一登が最長老で、三年前からは野尻久枝が参加するようになった。二人ともすこぶる壮健だが、今年七三だか四になる筈なのだ。スキーは生涯スポーツを体現して元気に滑り続ける二人を見ると、若い隊員たちは大いに励まされる。

ゴンドラ乗り場では、スキーパス・ヴァッレ・ダアオスタを買うことにする。これ一枚あれば、クールマイユール、ヴァレーブランシュへのモンテビアンコケーブル、それにラトゥイールも滑ることができる。

 早速、プラン・シェクルイへ上がる250人乗りケーブルに並び、行く手を見上げると、シェクルイには雲かガスか湧き出すように覆い始めている。イヤな予感がちょっと。

 プラン・シェクルイに着いてリフトで上がり始めると、今度は空から雪が舞い降り始める。このあたりでチラつくということは、上に行けば、もっときつくなるだろう。不吉な陰が大きくなってきた。
コッパ・デラ・アミチツッア(兄弟サカズキ)

グロッラ回し飲み

中味はグラッパ、カフェ、リキュール。


 窓から見えたバラ色のアルプスはどこへやら。身支度整え、スキーパス買う頃には曇り空。プランシェクルイでレンタルスキー借りる隊員を待って、リフトで上がると雪が舞い始める。

 二本くらい滑っただけで、降雪更に強まる気配濃厚。ゼロッタへ降りるピステから、クレスタユーラへ戻り、様子見てまた滑ればいいかぁとゴンドラ乗り場でお茶することにした。

 暫く休んで外へ出ようとしたら降雪は一段と強くなっている。出口の方へ向かうと、逆風に乗った雪が身体を巻き込むように吹きつけてくる。中へ押し返されるように逆戻り。そのまま、昼飯ということになってしまった。

 窓越しに吹き荒れる雪眺めながらレストランで過ごしたが、一向に弱まる気配ないので、ついに午後3時過ぎ、吹雪を突いてクールマイユールの街へ舞い戻ることになった。

 翌朝、昨日の猛吹雪にヴァレーブランシュは諦めていたが、起きたら雲ひとつない快晴。ステファノと「晴れたらヴァレーブランシュへ行こう」と打ち合わせてはいたが、晴れていても、氷河滑降が可能かどうかは分からない。

 ステファノの携帯を呼んでみたが、スイッチが切れていてつながらない。気をもみながら、レストランで朝食を取っていると呼び出しがあった。「ヴァレーブランシュに行けるよ」電話の向こうで、ステファノの声が弾んでいた。


カラになるまで回ってくる

飲むしかない

あ、またきた

 「グーっと 一息であけるといいですよ。」楓山一登

ついに全部あきました。いや、みごと、みごと

と思ったら、また ひとつグロッラが、「オトコならこれも、あけちゃわないとね」楓山



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